蕎麦屋の不動産屋、W先輩の死。

osyousan2006-01-18



昼食はコートを着て自転車に乗って出る。
久しぶりに元気な女将のいる蕎麦屋に入る。
出遅れたので込んでいる。
カウンターに座って女将から声が掛かるのを待つ。
調理場では大釜の熱湯にそばを放り込んで
取っ手のついたザルですくっている女将の姿。
目がつり上がっている。おお恐い。


5分ほどすると「お客さんは?」と聞かれた。
小さな声で「盛り一枚」と告げた。
客を数える。
カウンターに8人、低いテーブル席に11人。
合計19人。
この客をパートのタカナさんと2人でさばく。
外にはお客係の娘、スミちゃん。


私の隣りにいたお馴染みさんに「はい、キツネうどん」と
出した。常連のオヤジは「おれ、餅うどんだけど..」と気弱に答える。

女将の言葉:
えっ!だって「何にしましょう」と聞いたら「モチ!」と答えたので
「勿論いつもの」と受けとったわよ、だっていつもキツネうどんでしょう。
今日はこれを食べてちょうだい、明日餅うどん(力うどん)を食べてネ。


常連は、ハイハイと食べている。


縦のストライプ模様の背広を着た老人が入ってきた。
暗黒街のボス「フランク・ニティ」が着ている背広。
爺さんの耳に補聴器、顔にシミ、お迎えぼくろとも言う。
外見では70才半ば。
私の隣りに座り、まず私が食べている盛り蕎麦をジッと見る。
するとカウンターから大盛り蕎麦が出てきた。
ストライプ爺さんこの大盛り蕎麦を指さし「オネエチャン、
ワシこれがいいよ」と注文。だがここのシステムはカウンターに座ったら
恐い女将から聞かれないと注文出来ない。
スミちゃんがお茶を出しながら「後から聞きますから..」と
教える。


ストライプ爺さん、手に持ったオーストリッチのカバンをカウンターに乗せてた。
どうも不動産屋らしい。
そばにあった台フキンでカウンターを拭きだした。
その後私の前にあった七味の缶を手に取る。
とても落ち着かない。
やっと女将から「お客さん何にしますか?」と声。
すると「ネエチャン、えーと何だっけ?」とスミちゃんを呼ぶ。
「ネエチャンじゃなくて、自分で分かるでしょう?」と女将。
ストライプ爺さんは指を差しただけで蕎麦の正式名は知らないのだ。


もっと見ていたかったが蕎麦湯も飲み干したので
店を出る。


久伊豆神社に行く。


参道を過ぎて大鳥居をくぐると大太鼓の音。
厄払いの人がいるのだろう。
お祓いを終えた40才くらいのカップルが池のそばにいた。
旦那の厄年かな?


家に帰ると娘が来ていた。
私達の結婚記念にムックの洋服を買ってきてくれた。
今、一番大事にしているムックへのプレゼント。
自分のものより嬉しい。


娘を交えて夕食。
熱々のけんちん汁、鮪の中落ち、豚トロの大根下ろしかけ、
そして暖かご飯。


PCを開くと昔の部下からメールが入っていた。
昨年11月、心筋梗塞で倒れて意識不明だったW先輩が、本日亡くなったとの
訃報だった。
W先輩には仕事でお世話になったが、所属が変わっても、退職しても、
麻雀のメンバーを集めて毎月遊んでくれた。
雀荘がある神田に行くとまず中華店で餃子を食べるのが私の習わし。
時々駅前の立ち食い蕎麦屋にいるW先輩を見かけたものだ。
そんなときは声を掛けなかった。
どうせ30分後に雀荘で会うから..。


酒もタバコもやらない奥さん孝行のW先輩はまだ66才。
まだまだ若い。
合掌。