はじめての居酒屋

osyousan2005-10-19



朝、職場に行くとそばの交差点に救急車が止まっていた。
直進車と右折車の衝突。
若い男性がむち打ちになったみたいで首を固定する器具をつけて貰っていた。
するとその青年に中年のおばさんが近づいて行く。
ずうずうしい野次馬オバタリアンだと見ていたら
「会社に連絡した?大丈夫?」と話しかけた。
どうも同じ会社のおばちゃんのようだ。
彼の車を見たら○○典礼とあった。
この男性は葬儀社の社員だった。危うく自分の会社の世話になるところだった。
「葬儀屋が 事故で危うく 霊柩車」


昼、うるさいおばちゃんがいる蕎麦屋に行く。
軽く盛り蕎麦を食べる。
水気がたっぷりあってツルツルと喉ごしがいい。
何しろせいろからポタポタ水が落ちるまま出される蕎麦である。
それとおばちゃんの甲高い声。
「スミちゃん!できたわよ、早く持っていって!」「タナカさん!それじゃダメ!少ない!」と叫んでいる。
因みにスミちゃんは自分の娘、タナカさんがパートのおばさんである。
耳にビンビンする声の中にいるのは30分が限界である。


天気がいいので土手に出る。
土手下に5,6人の人が横になって昼寝をしていた。
そばに行ってみると土手の草刈りをなどしているおばちゃん達。
ここで弁当を食べていい天気なので昼寝をしているのだ。
そのそばに「フジバカマの里」と書いた看板がある。
秋の七草のひとつフジバカマがまとめて植えてあった。
ゆっくり見るのは初めて。
地味な花だ。


5時になるともう薄暗い。明るい夕方はもうない。
初めての店「U」に寄ってみる。ガラス越しに主人が動いているのが見える。
外にテーブルが出してありここにも客は座れるようになっている。
明るい主人は年の頃40半ば。客は私だけだった。


このマスターはよくしゃべる。
3年前まで八重洲割烹店で板前をやっていたそうだ。
生ビール、焼き鳥とカツオの刺身を注文。
この戻りカツオが旨い。


そのうちマスターと以前一緒に働いていた同僚が入ってきた。
まだ若い。彼も八重洲の店を辞めて今は保険の外交員。
話しを聞くと30後半の男性は、数年前に癌で奥さんを亡くして今年同じ店にいた7才年下の女性と結婚した。
娘は新しい母親を「おねえさん」と呼ぶ。
その奥さんも、今は田舎に帰っているという。
それを聞いてマスターが「もう逃げられた?」と笑った。
奥さんの父親が癌で危ないそうだ。
母親は病気で寝たっきり。
暫く世話が大変だ。


70才くらいのお爺さんが入ってくる。
馴染み客らしい。
すぐ後からこれも70才くらいの皺くちゃ婆さんが爺さんの隣りに座る。
2人は夫婦じゃない。仲がいい茶飲み友達。
こういった居酒屋でデイト。
いくつになっても男女。


トイレに入るといい言葉が貼ってあった。
「ありがとうは 幸せの魔法の言葉」


ボトルを入れて予想通りの勘定を払って外に出た。