喫茶店
庭の隅に水仙が咲いていた。
毎年、しっかりと咲いてくれる。
朝、霧雨が降っている。
ムックの散歩を早めに切り上げ家に戻る。
ムックを抱いて洗面所台の淵に立たせる。
そして温水で鼻頭、前足、後ろ足、お腹と洗う。
結構、大人しく洗わせる。
淵に足をつかせるのがコツ。
昼、雨の中、歩道橋の下にある喫茶店「S」に入る。
窓ガラスから足早に通り過ぎていく通行人や、自動車を
見るのが好きである。
他人の行動をじっと見ているのが好きなのは、多分、
私の幼年期に原因があるのじゃないかな。
6才の時、小児結核で入院した。
別に痛いところはないので、来る日も来る日も病院の窓から
外を眺めていた。
病院に裏に広場があった。
そこに遊びに来る子供達をじっと見ていたのだ。
多分、これが私の人間ウオッチングの原点。
カウンターに座り鮭のムニエルランチを食べる。
ここのご飯とお新香が旨い。
マスターは脱サラした40代後半。
野球帽を反対に被って鼻歌まじりで調理をしている。
奥さんが公務員とかで、あくせく働いていない。
そんな客に諂わないマスターが面白い。
前の食器棚に映っているカウンターの客を見ていたら、
私の隣りにいないはずの女性がいる。
びっくり。
実際は、私の隣りは、初老の市役所職員が座っているのだ。
原因は食器棚のガラス扉が少し開いていて、その角度カウンター隅に
いる女性とぴったり合っていた。
まさにトリック。
幽霊、オカルト話に全く弱い私である。
写真は水仙の前。
ムックはまるでスターウオーズのチューバッカみたいだ。